川のさかな情報館

そもそも魚類とは

魚類とは分類学的には脊索動物門のうち,ヌタウナギ類,ヤツメウナギ類,板皮類,軟骨魚類,棘魚類,条鰭類,シーラカンス類,ハイギョ類などの総称です.下の図はFishes of the World fifth editionを参考に作成した脊索動物門の系統樹です.この分類について詳しく知りたい方は以下のリンクを参考にしてください.

Fishes of the World 5
「Fishes of the world fifth edition」の目次だけ見る その1(和名付き)

魚類は非単系統です.ヌタウナギ類とヤツメウナギ類を合わせて無顎類と呼びますが,以前は魚類を無顎類と顎口類に大きく分けていました.無顎類が単系統かそうでないかは現在も研究者によって意見が分かれるようです.

2023年5月現在,全世界には36,500種ほどの魚類が知られており,そのうち日本には未記載種を含めると4,900種以上が生息しています(本サイト調べ).
全世界の魚類の1/10以上が1つの国に集まっているわけですから日本は魚天国と言えますね.まあ,ただ単に分類の研究が進んでいるだけかもしれませんが…

 

淡水魚とは

厳密に言えば一生を淡水中で生活する魚が淡水魚ですが,一般的には回遊魚や河口(汽水域)の魚類も淡水魚として取り扱われます.
本サイトでも淡水魚を「生活環のうち全部または一部を淡水域で過ごす魚類」と定義します.
しかし,淡水魚と海水魚の間の線引きは非常に難しいです.
そこで,本サイトでは以下の条件に当てはまるものを淡水魚としました.

  • 次の条件を二つ以上満たす種.
    • 川那部ほか編(2002)に掲載されている種.
    • 瀬能監修(2021)で上流域,下流域,河口域,汽水域等が生息場所になっている種.
    • 中坊編(2013)で上流域,下流域,河口域,汽水域等が生息場所になっている種.
    • Kottelat(2013)に掲載されている種.
    • 吉郷(2014)で次の区分に含まれる種:F,純淡水魚;D,通し回遊魚;B,汽水性魚類;P,周縁性魚類.
    • 環境省(2015)に掲載されている種.
    • 細谷ほか(2019)の「日本産淡水魚類リスト」掲載種.
  • その他の報告などから,淡水域や汽水域が生息場所であると思われる種.

以上を踏まえた本サイトの日本産淡水魚一覧によれば,日本産淡水魚の総数は約600(亜)種ほどになります.


生活型による淡水魚のグループ分け

本サイトでは河川の利用の仕方によって淡水魚を以下の生活型に分けました.
さらに通し回遊魚は3つのグループに分けました.
ただし,複数の生活型が存在する種もいますし,どちらともいえない生活型を持つ種も存在します.

 

純淡水魚 一生を淡水中でおくる魚類.本来は通し回遊魚だが,陸封された個体群も含む.日本産約210種.
例)タナゴドジョウキタノメダカ
通し回遊魚 生活環のある時期に規則的に川と海の間を回遊する魚.
┣降河回遊魚
┃(こうかかいゆうぎょ)
生活環の大部分を淡水域で生活し,産卵のために川を下り海へ降下する魚.日本産約8種.
例)ニホンウナギヤマノカミ
┣遡河回遊魚
┃(そかかいゆうぎょ)
生活環のほとんどの時期を海で生活し,産卵のために海から川へ遡上する魚.日本産約30種.
例)サケニホンイトヨ
┗両側回遊魚
(りょうそくかいゆうぎょ)
海から川への遡上が産卵のためにではなく生活環のある一定の発育段階におこり,生活環のほとんどの期間を川で生活する魚.日本産約70種.
例)ボウズハゼカンキョウカジカ
周縁性淡水魚 元来は海産魚だが河口の汽水域で生活したり,一時的に淡水域に侵入する魚.日本産約290種.
例)マハゼボラスズキ

○参考文献○

  • 細谷和海・内山りゅう・藤田朝彦・武内啓明・川瀬成吾. 2019. 山渓ハンディ図鑑15 増補改訂 日本の淡水魚. 山と渓谷社, 560pp. Amazon
  • 巌佐 庸・倉谷 滋・斎藤成也・塚谷裕一(編). 2013. 岩波 生物学辞典 第5版. 岩波書店,xvii+2172pp. Amazon
  • 環境省. 2015. レッドデータブック2014 日本の絶滅のおそれのある野生生物 4 汽水・淡水魚類. ぎょうせい,xxx+414pp. Amazon
  • 川那部浩哉・水野信彦・細谷和海(編). 2002. 山渓カラー名鑑 日本の淡水魚 3版.山と渓谷社,720pp.
  • Kottelat, M. 2013. The Fishes of the Inland Waters of Southeast Asia: A Catalogue and Core Bibliography of the Fishes Known to Occur in Freshwaters, Mangroves and Estuaries. The Raffles Bulletin of Zoology, 27: 1-663.
  • 水野信彦・後藤 晃(編).1987.日本の淡水魚類 その分布,変異,種分化をめぐって.東海大学出版会.ix+282pp.
  • 中坊徹次(編). 2013. 日本産魚類検索 全種の同定 第三版.東海大学出版会,l+2430pp.
  • Nelson, J.S., Grande, T.C. & Wilson, M.V.H. 2016. Fishes of the world. 5th ed. John Wiley & Sons, Inc., xli+707pp. Amazon
  • 瀬能 宏(監修). 2021. 新版日本のハゼ. 新訂・増補版. 平凡社, 588pp. Amazon
  • 吉郷英範.2014.琉球列島産陸水性魚類相および文献目録.Fauna Ryukyuana, 9: 1–153.

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